[追記あり] 「品格」

 …と、カギカッコで括ったことで、なんとなく気分を察して下さいw 

 最初に言っておきますが、別に私は、腰パンというファッションスタイルが好きなわけではありません。
 高校時代の制服は膝下15センチがデフォルトのボックスプリーツスカートという何とも重ったい代物で、少なく見積もって5割ぐらいの生徒が膝丈に詰めてた中、私は馬鹿正直に(笑)規定通りの長さのまま履いておりました。あ、時々ウエストのところで巻いて短くしてましたけどw
 制服っていうのは(ま、まあ、膝下15センチはぶっちゃけ野暮ったいですけどw)基本的に、きちっと着たほうがカッコいいようにできてるものだ、と思います。

 その上でゆる~く毒吐きます。
 国母選手の問題、そんな大ごとになるようなことかなあ?


 
 腰パン、シャツ出し、緩めたネクタイ、加えて鼻ピアスとドレッドヘア。
 当初の問題は「公式ユニフォームを着崩している」っていうところだったと思いますが、彼の出で立ちの一つ一つがことごとく批判(じゃないか、“叩き”か)の的になってますね。まあ私もあの手のカッコした男子はそれほど得意じゃないんですけど、そんな目くじら立てるようなことかなあ、というのが率直な感想です。
 日本オリンピック委員会(JOC)の日本選手団公式服装着用規定に、「日本選手団公式服装着用規定「(着用の規定) 第2条 日本選手団に認定された者(以下「選手団という」。)は、自覚と誇りを持って公式服装を着用しなければならない」とあるそうですね。これ自体、何とも規定としての実態に欠ける規定ですけどね…。自覚と誇りを持って着用する、という、解釈に幅を持たせた記述をしています。そこは個人個人で適当と思うように身なりを整えろ、ということなんでしょう。
 その規定がありつつ、あの問題が浮上するまで国母選手は注意されなかったんですかね? 全日本スキー連盟の萩原監督という人が「ここまで大騒ぎになるとは意識していなかった」と言ってます。要するに、彼は自分がいいと思うようにユニフォームを着、周りもそれを問題と思っていなかったんですよね?

 発端は、報道で彼の移動中の出で立ちを見た人たちからの抗議だったようですが。
 「バンクーバーへ渡航する際、国母は公式服装のシャツを出し、ズボンを腰ではき、ネクタイを緩めていた。これを報道などで知った人々から、SAJ(全日本スキー連盟)は抗議の電話を受けたという。」ということですが、私はそっちの方にどちらかと言えばイヤな気分がします。
 報道で、選手団が移動している様子を見た視聴者(?)が、たまたまああいう格好をしてる国母選手を見つけて「服装乱れてるワルそうな若者いたぞー!」と色めき立って、いそいそとSAJに通報したってことですよね? しかも、そういう人が、決して少なくない人数居たってことですよね?(個人的な感情の話をすれば、私はそういう人とは友達になれる気がしません)
 そして、そういった抗議の声を受けた途端に、今まで国母選手の格好を問題と思ってなかったはずのSAJは掌返して「ルールは守らなければいけない」といい、JOCは「国民の税金を使った代表の服装じゃない」といって、どちらも国母選手に責任を取らせようとします。
 大人だから、自分のしたことの責任は自分でとるべきです。でも、国母選手の「責任」を追求し始めたのは、あくまで、報道を見た視聴者からのクレームがあった後でしょう? 「自覚と誇りを持ってユニフォームを着用」すべきだと規定して、そのガイドラインに照らし合わせて一度は問題なしとした関係団体の判断は何だったのでしょう。
 そして、出場辞退の可能性まで湧き上がったのだとか。臭い物には蓋、というスタンスを感じてしまいます。
 ここで、国母選手の気持ちになって考えてみれば、どう控えめに見積もっても「けっ、お偉いさんは結局いつでも御身大切なんだな。選手をバックアップする気なんて、さらさらないんだな」ぐらいのことは思っておかしくないです。私だったら思います。
 まあ、そんなふうに思ったとしても、面白くない気分をぐっとこらえて、殊勝らしく謝っていればここまで大ごとにはならなかったんでしょうけど、そこが国母選手という人の…正直さというか、お馬鹿さというか?
 大人げないなあ、とは思いますが、これ私も人のこと言えないやw だって仕事でもない限り、自分の納得行かないことで謝るのキライなんですもん(;^_^A

 出場辞退は結局回避できました。でも、あわよくば蜥蜴の尻尾切り的に一選手を切ろうとしたオリンピック関係団体、この騒動を受けて国母選手の応援会を自粛してしまった東海大、彼が結果を出せなかった暁には(と敢えて言います)すぐさまバッシングできるように準備万端なのだろう多くの人々。彼の服装や態度よりも、こうした人々の心性のほうに、私は何だか邪悪なものを感じてしまいます。
 もうね、この手の騒動は見飽きてきてるんですよ…。もしメダルに手が届かなかったらどうなるか、イヤすぎるほど想像がつきます。そして、そういうことを望んでる人たちがきっといるんでしょう。ザ・バッシング・ショー。品格がないなあ、と思います。人間としての品格が。一生懸命頑張ってきた人を普通に応援するのがそんなに難しいことかしら。それとも、「それだけじゃツマンナイ」んでしょうか。そんなに、人の悪いとこばっかり一生懸命あげつらわなくてもよさそうなもんなのに。
 しかも、彼の罪状って要するに単に「お馬鹿である」ってだけでしょう? 試合相手を侮辱したわけでもないし、ましてや酔って暴行をはたらいたわけでもない。大したことじゃないんですよ。

 朝のテレビ番組で現地の外国人にインタビューしてた、その回答が確かこんな感じでした。

 ・国母選手の服装についてどう思うか
 「カッコ悪い。何でそんな下まで下ろすのか」「普通にユニフォーム着ればいいと思う」
 ・処分についてどう思うか
 「そんなのは誰かが、ちゃんとズボン穿けよって注意してやればいいだけ」「どうしてそんな騒ぐのか分からない」

 …えっと、その通りだと思います(;^_^A

 
 選手の数だけ、ストーリーがあります。大会に出て何位だった、などというのは要するに通過点で、そのいくつかの通過点をつなぐ、果てしなく長くて地味な“線”の日々があります。その“線”のなかで、怪我に泣いたり練習の意義を見失いかけたり、家族や友達やコーチとの絆に癒されたり、ファンからの応援に奮い立ったり、します。
 国母選手にも、きっとそんな日々があるはずです。そして、他の選手のそれと同じように、やっぱり感動できる何かがあると思うんです。
 でも、多分この流れの中じゃ、そういった地味な努力の日々を紹介してもらえる機会は当分おとずれないでしょうね。彼のキャラは決まってしまったみたいです。「ひたむきに頑張って代表の座を勝ち取った、応援すべき選手」ではなく、「最近の若い子の悪い部分を抜き出して貼り合わせたようなヒールキャラ」に。
 でも、自分のストーリーは自分の中だけにある。頑張って下さい。
 「(開会式出られなかったから)やっと雪を踏むことができた。嬉しい」みたいなことを言ってにっこり笑ってた様は、なかなか可愛い普通の男の子じゃないですかw
 気にしてない素振りを見せていましたが、おそらく強がりでしょう。さらにおそらく、ですが、彼は結構デリケートなんじゃないかなあ。普段の自分のスタイルを貫くことで、本番へのメンタルを整えている、のかもしれない。服装やピアスもその一環、なのかもしれない。想像です。そういうことを報道してもらえる機会はなさそうなので本当のところは分かりませんが、私は目に見えないものを想像できる人でありたいな、と思います。

 望むと望まないとに関わらず割り当てられてしまったキャラクターですけど、まあ、半分は因果応報だとも思うので(笑)、潔く受け入れて、その上で腐らずに頑張っていいパフォーマンスをしてきてね。私は応援してます。他の選手と同じように。そしてその結果に対して、拍手を送ります。
 どんな結果になっても、それまでの努力の日々は、他のどの選手とも同じだけの重みがあるはずだから。

*****

[追記部分]

 この辺りの記事を参考にしながら書きましたが、事実認識に間違いがあったらすみません。
 ・スノボ国母、服装乱れで入村式外される(日刊スポーツ) – gooニュース
 ・国母辞退回避!聖子団長進退かけて“保護観察”(スポーツニッポン) – gooニュース
 ・オリンピックは国民の代表なのか?:きっこのブログ

 ここにも、「きっこのブログ」と同じ内容の引用があったんですね。今日知りました(18日現在)
 ・晴耕雨読の信之介:国母問題についてのスノーボードチームコーチの説明

 同じ「冬の競技」でも、ずいぶん流儀がちがうんだなあ。代表としての自覚、っていうメンタル面についても、このハーフパイプっていう競技をオリンピックに取り入れた時点で、彼らのマインドまで織り込み済みでやるべきなのかもしれない、と思ったり。
 スポーツマンシップ、って、当然のことだけどスポーツマンの心の中にあるものです。でも最近では、スポーツで身を立ててない人がしたり顔で、自分の妄想する「スポーツマンシップのような何か」を押しつけてるような気がします。夢を見るのは自由だけど、自分の妄想で選手を縛っちゃいけない。「応援してくれる皆さんのおかげ」ではあるけど、試合はやっぱり選手のためのもの。選手がそれぞれの技と力を競い合う競演です。私たちはそれを遠くから見せてもらってる立場なんですよ。さまざまな思い入れを抱いて私たちはスポーツを見ます。でも、その思い入れは自分の中にとどめておこうよと。あらゆる面で人品優れた人しかスポーツやっちゃいけないわけでもないでしょう。

 つか、上のリンク先にある「スノボチームコーチの説明」が事実なら、全日本スキー連盟って相当駄目な組織ね…。選手のバックアップをするはずの組織が、選手の名前を黙って名簿から消すようなことをするなんて思いたくないですけど。できれば原典に当たりたかったけど、元の記事のリンク先が切れちゃってますね。
 ただ、元の記事が掲載されてたブログの、インデックスに当たるページがこちらでして、ソースに間違いはないと思います。
 ・lanternarossa & riccio Blog

 ・国母和宏|徳本一善オフィシャルブログ
 ・MUSIC YOU LIFE 建前を学ぶということ(国母騒動について)
 この方々の意見に最も賛成です。あの格好と言動、望ましくはない、でも罪ではない。少なくともスキー連盟や大学は、彼を庇い、バックアップし、その上でちゃんと「叱る」べきだと思います。

 それにしても、「品格」、最近よく聞くようになった言葉ですけど、なんだか、“普通”からちょっとはみ出た人を安全な場所から集団で叩くための便利な言葉を見つけてきたもんだね、と思ってます。
 「あいつは普通とちがう」って言ってしまうと、今の時代、「何をもって普通とみなすんだ」っていうツッコミが入ります。でも、「品格」と言ってしまえばぐうの音も出ない。美しい言葉です。言葉自体に罪はないですけど、用法の問題ですよね。

(追記ここまで)

コメント

  1. 仕事するの?