月の舟が音も立てず
そっと窓辺に 寄せてきた
夜の闇が波のように
枕元へと 満ちてきた
眠りについたこの街の空へ
胸騒ぎにかられて舟を出す
薄いカーテンを揺らす夜風が
きみの零した溜め息のようで
月の舟できみのもとへ
心はもう そばにいるよ
夜の闇はなんて深い
きみを想って はじめて知った
寝息をたてるあの街の底で
膝を抱え込む きみの隣へ
走る心が霧笛を鳴らす
ここにいるよ、私がいるよ
夜を渡って 朝を目指そう
震える声で名前を呼んで
小さな小さな呟きに
アンテナ伸ばして 耳を澄ますから
深すぎる闇のその先に
何も見えず怯えてるんだね
眩しすぎる朝が怖くても
いつもきみの味方だから
月の舟が溶けて消えてく
白み始めた 街の空へ
夜を渡って 朝を目指そう
震える声で名前を呼んで
小さな小さな呟きに
伸ばすこの手は無力でも
夜を渡って 朝へ向かおう
立ちすくむ時は名前を呼んで
ゆっくりゆっくり歩いて行こう
尽きせぬ明日へ さあ
月の舟が消えてく空を
きみもどうか 見つめていて