【石と雷鳴】

最初の一粒が来る
凝り固まって地上に落ちる
その前触れが鳴り響く
ほんの10分 一瞬 あるいは永遠

汗にも涙にもまして言葉になんて到底なれない何かが
沸き起こって込み上げて今にもえずいてしまいそうだ
僕の雲はいつも頭打ち
石ころひとつにせき止められて

上昇するはずだったスピードで横に流れて
世界を作った神様がもしいるとして
その神様ひとの腕みたいにすべて覆い尽くすことも
できずにただ石ころがもんどりを打つ
誰も知らない 雷鳴

最果ての空の下
コリオリの力に煽られ
時計みたいに急かすんだ
今もほら 1分 1秒 あたかも永遠

汗とか呼吸とか血液とか全部一斉に渦を巻き始めて
何も言えない何もできないまま一人で目眩がしそうだ
僕の鼓動はいつも早鐘
逃げ切れない嵐に追われて

カウントダウンで栓を抜くラムネの瓶の口から
溢れ出す泡みたいな雲だったなら
誰かが開けてくれるのをただ待っているのさえ
夏の陽射しに踊る乱反射
誰にも見えない 雷光

君が飲み干してくれるなら
石ころだってラムネのビー玉になれそうで

上昇するスピードそのままに堰を切って
あっという間に成層圏まで届いて
胸にコトンと落ちたビー玉が涼しげに歌いながら
夏の陽射しに乱反射して
そんな夢を見ながら
今日もまた石ころはもんどりを打つ

雷鳴


※自作バンド小説「Noisy Life」シリーズの劇中歌として制作中のものです。
作詞作曲:久住映光

映光が初めて自分で作った歌は『9月13日(仮タイトル)』というが、これは私の自作曲として上げたことがある『満天』の小説内でのタイトルである。
ちなみに作中における本決まりのタイトルは『届かない』。
あの内容の歌詞をモロに実話ベースとして自分で作って人前で歌えてしまうぐらいの特殊メンタルの持ち主ではあるので、彼の他にバンド内で作詞を手がけるドラマーの蘭子は、この処女作を基準として〝久住君ぽさ〟を構築し、それに沿った歌詞を書くわけである。

瀬川さんの描き出す〝ぼくっぽさ〟に不満があるというわけでもないけれど、自分はこんなにキュンキュンもキラキラもしてないな……もっとジメジメしてるしモヤモヤしてるし……なんか騙してるみたいで決まりが悪いな……と思っていて、さりとてそんな難しい話題をおいそれと切り出せず、ならば自分の言葉のつかえ・〝喉が詰まる〟感覚は自分で言語化しようと腹をくくり、できあがった一曲。
これを機に、しだいに映光による作詞作曲が増えていくことになる。

なお、蘭子が「久住君が歌うこと前提」で当て書きする歌詞とは、例えば自作曲『傘の下の永遠』や、歌詞のみ公開の『165センチメンタル』みたいなものである。