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高校時代、誇張表現抜きで、クラスの中に「居場所がなかった」。何をベタなことをwwwと思うかもしれないけれど、別にテンプレ通りのJ-POPを書こうとしてるわけでもなんでもなくて、本当にそうだった。
クラスの中のどのグループも、私をその中の一員として念頭に置いてたところは無かっただろうと思う。いじめられてたわけじゃない。無視されてたわけでもない。何か課題や学校行事で必要ならば普通にやりとりもした。けれど、本当にそれだけ。なんてことない他愛ない雑談のメンバーとしては、私はおそらく誰からもカウントされていなかった。
授業を受けることは、嫌いではなかった。感じ悪く聞こえるかもしれないけれど、そんなに成績が悪いほうではなかったと思う。特筆するほど良くもなかったけれど。苦手な科目は赤スレスレだったし。
高校は義務教育ではないから、授業を受けるために学校に来て、授業だけを淡々と受けて、他には特に何も喋らず、そして帰宅する、それでとやかく言われる筋合いは何もなかったはずだ。でも、私自身にその状況を受けて立つだけの強さがなかった。休み時間にクラスの誰もが誰かと楽しそうに話している中で私だけが一人であることに耐えられなかった。もっと正確に言えば、「私だけが一人であるという事実が皆にバレてしまい、それを笑われることに耐えられなかった」。
そこで、私は擬態した。
比較的近寄りやすい空気のグループの、輪の端っこになんとなく立っていた。そのグループの子たちは、きっと誰一人、私にその話を聞かせることを前提にして話しちゃいない。でも、追い払われはしないから、ずっとそこにいた。で、時々皆と同じタイミングで笑った。
虚しいと思われるかもしれない。私も虚しいと思ってる。しかも他のクラスにも友達なんていないときている。そんなだったらいっそ学校フケてしまおうかとも思った。授業を受けることにはなんの不満もないけれど(まー退屈な授業はあったけど、じっと座ってるのも嫌というほどじゃなかった)、それ以外の要素があまりにも虚しすぎる。
でも、できなかった。
学校をフケたら一体どんな事態になるのか、面倒くさがりのくせにシミュレートしてしまうのだ。まず確実に、家に連絡が行く。そうして親が呼び出されるか、家に先生が来るかする。まあ、初犯だったらいきなりそうはならないかもしれないけど、少なくとも私は家に帰れば説教が待っている。親父にはひょっとしたらひっぱたかれるかもしれない。そして、なぜだと訊かれるだろう。その時、私は、クラスで自分がどんな状況なのかを説明するのだろうか。とてもじゃないけれど、御免だった。何かそれらしい言い訳を用意しなければならないけれど、それも思いつかない……。一言で言って、ものすごく面倒なことになりそうだった。
そう、私はつまり、面倒くさがりであるがゆえに、一人も友達のいない学校をサボることさえ、ただの一度もできなかった。
親に学費払ってもらってるし、とか、先生に恨みはないのに申し訳ない、とか、そんなものは建前で(もちろんそれもなかったわけじゃないけど)、ただ面倒くさいというそれだけの理由で、自分にとって居心地の悪い場所から逃走することさえ怠けていたわけだ。
特別ガラが良いわけでも悪いわけでもない学校だったけれど、サボる生徒はたまにいたように記憶してる。そういう側にも、私はなれなかった。そんなものを勇気とは呼ばないと、良識のある大人は皆口を揃えて言うだろう。でも、当時の私にとってはそれは紛れもなく「勇気」であって、でもって私にはその「勇気」がなかった。
先生にも取り立てて不満はなかったし、親もまあまあそれなりにいい親の部類だったんだろうなと思っている。自分の中に何かそういう、言ってしまえば無謀な勇気へと駆り立てる原動力は、なかった。「友達が一人もいない」程度のことでは足りなかったんだろうか。あるいは、私の感受性が飛び抜けて鈍いから駆り立てられなかったんだろうか。
どっちにしても、寂しかったし、哀れだったな、と思う。痛ましくて痛ましくて、実のとこ未だに直視できない。夜中に布団の中で突然思い出して目が冴えてしまって、一人暮らしじゃないから喚くわけにもいかず、押し殺した呻き声をあげながらいたたまれない気持ちになったりする。たまにだけど。
そのたびにいつも思うのだ、「楽しみも苛立ちも全部高精細フルカラーであるはずのあの高校時代に、私、一体何やってたんだろう」と。そして、自分が選ばなかった道のことを思う。あの時もしフケていたらどうだっただろう、今の自分はどうなっていただろう。戻って検証するなんてことは決してできないから、妄想するしかなくて、選ばなかった道の先はいつでも少し輝いて見える。あの道の先に、ひょっとしたら、何らかの答えがあったのだろうか。
ずっと前から知っていた。私の感じてるのは「眩しさ」だ。この眩しさを説明しようとするといつも失敗してしまう。きっと他のどんな人にも完全には分かってもらえないだろう。それでいいしそれで当たり前だと思う。それでも、やっぱり表明はしておきたかったんだ。
いっときの圧倒的な衝動か、それともためらいにためらった末の決断か、いずれにしても全速力で暗闇の中へと逃走してゆくその後ろ姿が、眩しくてたまりません、と。