そいつは本末転倒じゃないかい

 あちらこちらで話題を呼んでる教育基本法改正なんですけども。
 まず一番最初に言わせてもらいたいのは、これだ。

「郷土を愛する心を持った日本人を作りたいんなら、愛すべき郷土を作る努力を全力でしてみやがれってんだ、オヤジども」

 人間には、集団に対する帰属本能というものがあります。
 でもって、自分の帰属する集団はすばらしいものだと、とくに誰に命じられるまでもなく自然に思ってる、もしくは、信じたがってるものです。
 当然ですね、たいてい人間は自分が可愛いものですから、その可愛い自分が所属している集団もとてもいいものだ、そうに違いない、という寸法。とっても理解しやすい考え方です。
 それを、わざわざ法律で「郷土を愛せよ」なんて規定するのは、ものすごく不自然な話じゃないですかね?

 そう、日本に生まれ育った人なら、すんなりと日本に誇りを持てたほうがしあわせだし、そうしたいはずなんです。
 しかし、そういう人は今、たぶんかなり少ない。だからこんな法律のニーズが出てきたんでしょうけども。
 郷土(って、この法律では表現してますが、まー要するに“国”ですわな)を愛する人が少ない。だから法律を改正した。お前ら、この法律に従って国を愛せ。もしくは、国を愛する人間を育てろ。
 ……なんか、おかしくないですか?
 国を愛せと法律で規定しなきゃいけないような国を作ったのは、どこのどいつだと私は真剣に問いたい。ねぇオヤジども?

(いや、まぁ、こういうオヤジどもを選んだのは私たちだってことになるんだろうけどもさ……先人のかたがたが勝ち取って私たちに残してくれた大事な権利だから、とりあえず毎回ちゃんと選挙行ってますけど、行くたび思うんですわ。こういうオヤジのようでない人を見つけるほうが大変だ。そんなことしてたら、定員割れまくって国会機能しなくなっちまうと思うんだよ…orz)

 教育基本法に“郷土愛”を盛り込むということは、近いうちに、この郷土愛を育成するための具体的な方策や評価方法が決まっていくということなんでしょう。
 育成するための方策ってのもかなりマユツバもんだけど、もっと聞き捨てならないのは“評価”ってほうだ。
 愛なんていう、人の心の内面を、いったいどんな物差しで測定するつもりなんですかね?
 評価するってことは、一定の基準に照らし合わせないことには始まりません。じゃあ、その“一定の基準”ってのは、どこのどなたの胸元三寸で設けられ、適用されるんですかね?

 子供のケンカよりもまだたちの悪い大騒ぎをやらかして、こんなツッコミどころ満載の法律をこね回してるヒマがあるなら、私たちにちゃんと国を愛させてください。
 私たちはまだいいけど、子供たちがごく自然に誇りに思えるような国を、あんたがたが率先して作ってくださいよ。じゃなきゃ、子供たちがかわいそうだ。