子どもがかわいそうだ

 最近また、うかつな言動でマスコミを賑わしている橋下徹大阪府知事なわけですが、私どうも就任当初からこの人のやり口については首を傾げることが多くてですね…まずあれだけ味方を作る気がないとしか思えない言動を繰り返しておきながら、いざ議会で自分の提案がメタクソに反対されたら泣き出してしまったという一件で、かなりドン引きでした。
 なんかねえ、「周りが敵だらけの状態の中で孤軍奮闘してる俺ってカコイイ(*´∀`*)」とか思ってそうな雰囲気がものすごく感じられるんですよね…言いがかりだったらすいません。でも、自分の意見をがなり立てるだけなら子供でもできるわけで。大人で、しかも府政を司ろうかという立場の人なら、自分の意見をできる限り分かってもらうための適切な言動に気を配るのが当然という気がします。相手だって感情のある生き物ですから、はっきり言っていったん感情を害したら、たとえどんな正論を振りかざしたって絶対に賛同してもらえません。
 ニンゲンは最終的には感情で動く生き物。これ鉄則。


 それじゃあ、橋下府知事はやり口はともかく意見自体は「正論」であるかどうか、と訊かれたら、私にはそうとも思えないのですね。
 全国学力テストの成績について、その公開に応じない市町村へ教育予算を回さないというのを聞いて、ちょっと私はたまげてしまいましたよ。なんの脅迫のつもりでしょうかね。
 しかも、この脅迫、結局は子どもに被害が及ぶんですよ。公開に応じないから予算カット、とか言い出す知事ですから、成績が悪ければまたまた予算カット、なんてことになるのは想像に易いです。どんな子どもにも義務教育を十分に受けさせる義務がこの国にはあったはずですけど、違いましたっけねえ?
 ダンナがこの辺について既に「男爵日記」で書いてますんで、私の言いたいこともだいたいそれに準じるものとしますが。

 大阪府では、他にも、国際児童文学館が廃館になる予定とかで議論が交わされてますが、これについても首をかしげちゃいます。
 なんでも、橋下知事の私設秘書が8月末の土日に館員の仕事ぶりを「隠し撮り」した、ということですが、まあ抜き打ちで行なったってこと自体は悪くはないと思うんです。食品衛生検査や会計監査の類は抜き打ちが原則ですから。
 でも、私某元国営金融機関勤めしてましたから、会計監査に立ち会った経験は何度かあります。会計監査っていうのは、その日の朝突然やってきて、まる1日かけて局内のすべてを調べます。すべてといったらすべてです。金庫、事務室、応接室の引き出しから書棚、局内に保管されているすべての帳簿や証拠書を3人がかりで隅から隅まで調べ上げていきます。
 館員の仕事ぶりを「隠し撮り」するという行為が、会計監査のようにここまで「すべてを」調べ上げたことになるのかどうか、非常に疑問なのです。隠れて撮ることが可能な範囲のものしかビデオに撮ることができないんでしょ? その時点で、知事の手に渡る情報がかなり限定されてると思うんですが。
 それに、たった一人の私設秘書が撮った映像で、事実のすべてが分かるものでしょうかね? 確かに事実が映ってはいるでしょうが、一部でしかないはずです。そこにある事実を写すものである写真が、個人の作品として成立しうるのは、そのフレーミングの仕方で独自性が生まれるからです。ビデオも同じように、映す人のフレーミングによって違う印象を見る者に与えうるわけです。
 あと、日本はいつからそうなっちゃったのか分かりませんが、専門職と呼ばれるものに対する敬意がちょっと欠けてる気がしますね。餅は餅屋、というか。図書館員の仕事で何が一番大事なのか、どこを見れば頑張ってるかそうでないかが正当に評価できるのか、そのあたりはもう、専門家でないと分からない部分だと思うんですが。
 医療分野でもそうだし学校教育分野でもそうだけど、専門分野っていうのは確かに、とかく閉じがちではあります。そのために、シビルコントロールみたいのは必要だとは思うんですけど、その専門分野が何ゆえに「専門分野」として成立しているのかをちゃんと考慮して、その専門性をむやみに軽視しちゃいけないのではないかと。

 ……というか、そもそも、曲がりなりにも教育学部を卒業した一人として言わせてもらうなら、国や自治体は教育予算に対してケチケチしないでいただきたい、というのが本音です。
 府政が圧迫されている、どこか削らなきゃならない、という時に、サクッと教育分野を削ろうと言い切ってしまえるというのは、どういう神経をしているのかと思ってしまう。要するに、子どもを育てる気がありませんという姿勢を示しているわけでしょう。子どもが育たなければ、将来の日本を支えていく人材がいなくなります。
 教育に金を渋る国は、遠からず滅びると本気で思ってます。

 今日の読売新聞1面に、「2005年の日本の国内総生産に占める公的な教育支出額の割合が過去最低の3.4%となり、経済協力開発機構の中で統計がある28か国中最低だった」とありました。
 この統計から3年経った現在、状況が大きく好転しているようには思えません。
 今回の橋下知事のようなやり方が、世間で実際にどのぐらい支持されているのかいまいち分からないところではありますが、こんな風潮が全国に飛び火していくかもしれないと考えると、この国で子どもを産むのがちょっとためらわれてしまいます。

 国際児童文学館について、こんな応援サイトがあるようなのでひとまずリンクを。
 【大阪府の国際児童文学館を応援します!