【振りサイト再録】すいません11月号追記です

──舌の根も乾かないうちに(笑)

田島が三橋に不安を打ち明けた、アレは、まさに“信頼”だよなあと思って、先日ダラダラ書き連ねてたわけですが。
阿部は当事者だから一番ショック、田島は初公式戦だから当然ビビってる。だから三橋はしっかりしなきゃいけない立場ですね。
でも、この状態の中で、三橋が打ち明けてもいい“不安”って、やっぱりあると思うんです。
それが、「オレの全力投球は、入らないことがよくある」ってことじゃないのかな。
 
 

「全力投球だと 並みのコントロールだなー」と田島がモノローグしてますが、これはやっぱり端で見てるだけでは知り得ない情報だったんですね。
田島は田島なりに考えてリードしてるわけですけど、三橋にとってみれば、ここは絶対ストライク取んなきゃヤバイという場面で、全力投球を要求されるのは、ものすごいストレスじゃないですか。
三橋自身は「阿部君は それ計算してリードしてくれたけど」「田島君が全力っていったら 全力の球でストライク入れろ!」と自分にハッパかけてます。
その気概は立派だと思うんです。でも、やる気や根性で、できないことが突然できるようになるわけじゃない。
根性入れたらできた、のだとしたら、それは、もともとそれができるだけの能力が備わっていて、根性入れることによって能力が全部発揮できた、というだけのことなんです。
だから、できないことを「できない」と言うのは、何も悪いことじゃない。
見栄張ったって何もいいことはないし、現時点でできること・できないことを正確に把握しておくことはとても大事なこと……というか、むしろ絶対把握しておかなきゃいけない部類のことじゃないかと思うんです。

三橋は、「全力投球で完璧なコントロール」なんていう不可能なことをやり遂げようとがんばっちゃう前に、「できない」という事実を自分から田島に伝えたほうがいいと思うんですよね…それもできるだけ早めに。
「オレの全力投球はたまにしか狙ったとこ行かないから、絶対ストライクにしなきゃいけない時には怖いから使いたくない」と伝えるのは、甘えなんかじゃなくて、立派な作戦会議です。
それこそ田島は公式戦初マスクなんだから、そういう“提案”は三橋のほうからしてあげるのが、かえって“しっかり”田島を支えてることになるんじゃないかなー。違うかな。

(思い返して、桐青戦で準さんは和さんに「雨で手が湿ってフォークがすっぽ抜けるから、投げたくない」ということを伝えてましたよね。
あれは大事なことだよなー。いざって時にすっぽ抜けちゃってから「実は…」なんて言われても、「なんでその場で言わねんだ!」(By阿部/笑)ってことになるでしょうしね)

でも、そういうことって、できればこんなことになる前に、常日頃から、正捕手である阿部が、自分の控えである田島にレクチャーしといたほうがよかったことなのかもしれない。
阿部が出られなくなった時のために田島が控え捕手になったわけで、いざという時には田島は阿部の代わりをつとめなきゃいけないわけですね。
そのためには、三橋をリードするにあたって、三橋の球種のクセとか使いどころとかを、できるかぎり細かく田島に教えといてあげないと、効率悪いじゃないですか。
今回だって、三橋の全力投球は9分割じゃないんだってことを、いざ自分で捕ってみて初めて知ったわけで。
自分が引っ込まざるを得なくなるかもしれない、ということを、現実的に考えていれば、阿部ぐらい頭のいい子だったらきちんと田島に教えてたでしょう。

だから、思うに、阿部って、その点あんまり現実視してなかったんじゃないかなーと思うんですよ。
控え捕手を作る話になって三橋が真っ青になったとき、「オレだってタックル食らって肩でも外れりゃ引っ込むしかない」と三橋に説明してましたが、そんな阿部自身、そういう可能性をほとんど頭に入れてなかったんじゃないだろうか。
三橋の球を捕るのはオレだ、オレが一番三橋を活かしてやれる、だから引っ込むなんて、考えられない──みたいな。
「お前の投げる試合は 全部キャッチャーやる!」と三橋に約束したのは、気休めなんかじゃなく、もしかして所信表明ですらなくて、本当に“確固たる信念”だったのかもしれない。
こっちもまた言い方BLチックでアレだけど(笑)「三橋はオレのエースなんだ」ぐらい、思ってたのかなー。

このあたり、やっぱり三橋と阿部って似てるよなーと思うんですよ…
チームの正捕手であるという自覚は(案外)薄くて、“三橋の”捕手なんだという意識のほうが数倍勝ってるように見えるあたりが。
あああああー。この試合で、阿部はここから脱皮する機会無いよなー、きっと。三橋は気づき始めてるけど。
阿部がこの手の壁にぶち当たった時、やっぱり引っぱり上げてやるのは三橋なのかもね。がんばれ三橋! 普段の立場と逆転する瞬間ってのが、ワタシ、大好きなんです(笑)