【振りサイト再録】花井と田島について本気出して考えてみた・第1弾!

11月号(第37回)と、それ以前のもろもろをふまえて、ここらでちょっくら花井と田島の人間関係についてマジ考察してみたいと思います。
つーか、もーいーかげん落ち着きたいのよあたし…! 自分の思考をいちいちダラ長く文章に起こさないと気持ちが収まらなくて実生活に支障をきたしてしまうという厄介きわまりない体質なのです。
(そのようにして数々の三橋考察も書かれたわけなのですね/痛)
 

 
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花井という少年は、自己評価が高いのか、それとも低いのか、ときどき解釈が揺れることがあるんです。
たぶん、どっちも、なんだろうというカンジで今のところ落ち着いてますけども。

これはどっかで書いたかなぁ…花井は、ひょっとして典型的な“器用貧乏”タイプなんじゃなかろうかと思います。何でもさらっとこなしちゃう。飲み込みが早く、およそ“とんでもなく苦手”なジャンルってものがない。何やらせても最初からそれなりにサマになって、それゆえに周りから頼りにされて、教師からも“ 出来のいい子”と思われてて、その評価を崩すことなく、周りから期待されてるとおりの結果をきっちりと出せる、そんなタイプ。
もちろん、そのためにしっかり努力はしてるんでしょうけど。
ただ、彼はたぶん知力体力統率力その他もろもろ、基本能力値が人よりちょっとずつ高いんじゃないかな。だから、それなりの努力ですんなりと成果が出ると。
もちろん、それ以上の、いわゆる“神ワザ”レベルに達しようと思えば、もっともっと血が出るぐらいの努力が必要なんだろうけど、そこまでの努力をする必要性が、中学までの花井の中にはなかったんじゃないかって気がするんです。

花井が野球をするにあたって、環境的な逆風はなかったように見える。どうしても越えられない壁が目の前に立ちはだかって、それを乗り越えなきゃ四番の座が危うい!とか、そういうことも…まぁ、仮に、なかったとして。
たとえば三橋だったら、まず彼に与えられた環境はひどく困難なもので、その中であくまで投げ続けようと思えば、もうその時点でどえらい努力とか、覚悟とかを強いられるじゃないですか。あの中で野球をするってだけで、もう既に、充分な苦行。
田島にしたって、連載のしょっぱなモモカンが言ってたとおり、四番に居座るには体格が小さくて。あの身体ではあまりデカイのは飛ばせない。とすると、彼のとるべき道は、もうとにかくむちゃくちゃ食って牛乳飲んで身体おっきくするか、飛ばせないかわりに器用に打ち分けたり、どんな球でも打てるような柔軟性を身につけるか、あるいはどっちもか。いずれにしても、体格はハンデですよね。

花井にそういうのはないわけで、で、花井の地位を脅かすほどのスゴイ素材がチーム内にいなかったとして。最初のほうの花井のモノローグとか、花井ママの発言とか見てると、おそらく中学の監督って人はあんまり指導力のある人じゃなかったっぽいですね。期待をかける、過不足なく応える、その繰り返し。それ以上に花井が発奮する材料ってのを、うまく与えてあげることができなかったんじゃないかなぁ。
だとすると、花井は、「まぁ、こんなもんかな」なんてどっか醒めた気持ちで野球してたのかもしれないな。西浦入るまでずっと。

──あ。これ、花井が不真面目に野球やってたって意味では決してないのです。
人に期待かけられると、花井はたぶんすごくそれをまともに受けとめるタイプなんでしょうね。出来のいい子に多いですよね。で、彼の場合、わりと器用なもんだからすべてきっちりとこなしてしまえる。たいがいの要求には、応えられるようなアベレージの高い優等生だと思うんですよ。
こういうタイプの子には、常に、ちょっと高望みに思える(でも、必死になって頑張れば達成できる可能性はある)ぐらいの目標を与えてあげないと、「このへんでいいかな」なんて満足しちゃう傾向があるんですよねぇ。このへん、たぶんモモカンはよ~くわかってるみたいですけど。

なまじ、小さい頃から頼られることに慣れていて、その信頼に応えることも、たぶん彼の中では“当然のこと”で。そうでない自分を思い描けないぐらいに、花井って子は理想自己が高いんじゃないかな。でもって、実際、周囲の期待に応えてきたし、みんなの頼れるリーダーであり続け、いろんなことが(まー程度の差はあれ)うまくこなすことができて、今に至ってるわけだ。
だから、自分がみっともなく敗れるという状態が許せない。

“負け慣れて”ない花井。でも? だからこそ? 自分が負けそうなシチュエーションを巧みに避けようとしてるんじゃないだろうか。
今までは、彼を負かす相手なんて、少なくともチーム内にはいなかったんじゃないかな。でも、西浦に入って、とんでもない才能──田島と、出会ってしまった。どう考えたって勝てそうに思えない。だからといって、勝ちたいという気持ちが消えるわけでは決してないけれど、田島に本気で挑んで負けたら、それは本当に、完膚なきまでに敗れたってことになってしまう。そんなのは、彼のプライドが我慢ならない。だったら、最初から張り合うのやめようと。
……思ってたりするかもしれないし、しないかもしれないなーと、思います……(ここまで語っといて語尾がやけにあいまい)

そう、これは、花井のプライドの高さであると同時に、自己評価の低さの現れでもあるんじゃないかなーと思うんですよね。
携帯サイトのキャラ紹介で、花井のこと「自己評価が高いタイプ」うんぬんと書いてありましたけども(確か)、ある意味、逆なんじゃないかなぁ。
花井は、うぬぼれるにはちょっと頭が良すぎる。
自分のことを“リーダー気質”だと思ってるかもしれないし、“けっこう野球うまいほう”だと思ってるかもしれない。ほかにも、イロイロ何かと平均点以上にこなせるヤツだと思ってるかも知れない。
でも、彼は基本的に、自分のことは“凡人”だと捉えてるような気がする。
上には上がいるだろうってことがわからないほど、花井は身の程知らずになれないと思う。天才ってのがこの世に存在するとして、でもそれは自分ではないと“わかって”いる。
また、世の中にはたまに、えらく偏った才能というのがあって。たとえば「他のなにやらせても人並み以上にこなせたためしがないけれど、これやらせたらこいつの右に出るヤツはいない」とか、「どんなにヘタでも、失敗し続けても、まるでそれをやり続けないと死んでしまうとでもいうかのように執拗にこだわり続ける」とかとか……そういうのにも、花井はなれない。
自分は凡才で、中庸で、いろいろそれなりにこなせるまあまあのヤツ、であるにすぎないと思ってるんじゃないかな。そしてそれが、彼の密かなコンプレックスなんじゃないだろうか。ちがってたらゴメン花井。

だから、田島の才能を目の当たりにしたとき、かなりあっさりと「勝てる気がしない」と思い定めてしまって、それなら競ったってムダ、自分がむなしくなるだけ、と言い聞かせようとして、けれど仮にもかつて四番だった彼のプライドが、やっぱり「アイツに勝ちたい」と疼き出す。
そのあたりの葛藤は、「オレは主将なんだから、自分の感情にばっかりこだわってちゃダメだろ!」という、一見至極もっともな理屈でもって(無意識のうちに)ねじ伏せてきて。
でも、いよいよそれが噴火してしまったのが、今回の崎玉戦なんじゃないかな~という気がするんです。

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一方、田島のほうもやっぱり“負け慣れて”なかったのは同じだと思います。
彼はそれこそ、スゲースゲーマジカッコイーお前って天才ーなどなど、そのたぐいのことは日常茶飯事で言われ慣れてたんでしょうね。もちろんそれで舞い上がってテングになるようなことはなかっただろうけど、事実として彼は常にチームで一番。強いシニアで、あの身体で四番張り続けてきたんだから、たぶん他のチームの強打者と比べても頭ひとつ抜けてたんじゃないかなぁ。

彼は確かに天才ではあるかも知れないけれど、素材だけでここまでやってきたわけではもちろん、なく。
たぶんちっちゃい頃からちっちゃかった(笑)んだろうから、これまで野球やってきた中で、体格のせいで涙をのんだことは少なからずあっただろう。それでも四番やってこれたのは、ひとえに努力あってのことで。
けれど、周りは、お前は天才だと言う。
これは、彼にとってどんなふうに聞こえるんだろうなぁ。
頭が煮えるぐらいの悔しさを抱いて、毎日死にものぐるいの努力をしているのに、まるで住む世界が違う天才のように言われる。そして、「お前はスゴイ」と他のチームメイトよりも一段上に上げられて、「お前にはかなわない」と諦め混じりの賞賛の声をかけられて、彼に本気で挑んでくるものは誰もない……
もし、田島の中学時代がそういうカンジだったとしたら?
その状態を経て、西浦に入って、もと四番だったという花井と出会ったのだとしたら?

今でも、やっぱり、西浦の誰もがみんな「田島はスゴイ」って言いますよね。アイツはスゴイ、さすが天才、オレたちとは次元が違うぜ、うんぬん。
ただ一人、花井という例外を除いて。
(…まー、三橋の「たじまくん スゴイ」は、なんかもっと野球を離れて近所のガキ大将に向けるまなざしに近いような気がするし、阿部の田島に対する評価も、これはこれでちょっと意味合い違うような気もするけど……それはひとまずおいといて。)
花井だけが、「田島がスゴイ」という事実に、感嘆だけではない複雑な視線を向けるんですよね。
スゴイ、のは認める。認めざるを得ない。でも、できれば認めたくない。「なぜ自分は田島のようでないのか」と真剣に悩み、悔しがる。
花井は、自覚してるとしてないとに関わらず、田島を“目指してる”。そして、もっと言ってしまえば“負けたくない”と思っている。
こういう人は、ニシウラーゼの中でも花井以外にいないような気がするんですよね。
これは、田島にとっては、今までぶつけられたことがなかった感情で、同時に、とてもうれしかったんじゃないかなぁ。
 

(「~第2弾!」に続きます…/長すぎだよ)