【振りサイト再録】ゆういちろうくんとりおうくん(SSネタ下書き)

試合前、みんなが緊張しながらもいまいち気合いを入れきれずにいたりする中、利央はひとり、先日の呂佳兄ちゃんからの電話を思い出している。
いわく、「ニシウラの誰かと、できれば4番と繋ぎつけてこい」。

なんでも、西浦にはなんとかって言う有名なシニアチームで4番張ってたバッターがいるんだとか。でもって、ひょっとしたら美丞とそこの西浦が当たる可能性があるんだとかいう話をされる。「うん? 西浦と兄ちゃんたちが当たるってどういうこと~!? 兄ちゃんと当たる前にうちが当たるんだよ!」といきり立つ利央。「はっはは~、ムカついたんならせいぜいダブルスコアぐらいで勝ってこい」みたいな意地の悪い(笑)エールを弟に浴びせて電話は終わる。

試合終了、勝利は西浦の手に。
これが“西浦の4番”か、と田島のことを観察していた利央、兄ちゃんの命令が頭にありつつ、純粋にいち選手として田島に興味津々になる。準さんのシンカーどうやって打ったのか、モーション盗んだってホントなのか、いつもどんな練習してるのか、などなど…
そして、意を決して、メルアド交換。
その後「いろいろ探り入れてこい」と呂佳に言われた利央、なんかそれはちょっと心が痛みつつも、「オレだっていち選手だ、人の練習法は気になるさ!」みたいに自分をだましだまし、田島とメール交換し、そのなかで西浦の様々な情報をゲットする。
(また、田島が気前よく全部教えるんだこれが…)

結構使える情報がそろってきたものの、それをやっぱりどうしても利央は呂佳にポンッと渡せない。甘いって言われようがなんて言われようが、もはや利央は田島をすげーいい友達だと思ってしまっていた。情報聞き出すとき、もちろん「お前のチームの裏事情教えろよ」とかいうわけはなく、野球友達同士の野球談義としてふつうに聞き出したものばかり。
これじゃ、友達だましてんじゃん…と、罪悪感にかられる利央、ついに本当のことを田島に打ち明ける。
すると、田島はあっさりと言い放つ。

「んー、そうなんじゃないかなって思ってたよ」

え!? とびっくりする利央。え、じゃ、じゃあオレが探り入れてるって知ってて、そんでお前はああいう話、ほいほいオレにしてたのかよ、と利央が訊くと、さらに田島はニッカリ笑って、
「だってさー、オレらが甲子園いったら、当然ケンキューとかされるわけじゃん。だったら、それが今だったとしても、たいした問題じゃないじゃん?」

なっなんてヤツ……と、利央はひっくり返る。
すげー、探り入れるとか何かフェアじゃないよー、兄ちゃん容赦ねーなぁとか思っていた利央だけど、コイツちょっと信じらんねーぐらい上手だよ……と。
同時に、勝ちたいと思うってことはこういうことなのか、と目からウロコ。
今の自分たちに足りないところを知り尽くした上で、こんな場所にとどまる気はない、もっと上にいきたい、むしろ行くのがはじめから決まっているような確信を、自分に対して抱き続けていられる精神力。
桐青の夏は、もう今年は終わってしまったけど、来年の自分たちはきっと甲子園へ。なみいる高校をなぎ倒してあの憧れの地へ突き進んでいく自分の顔は、今のコイツみたいな不適で晴れやかな顔でありたいなぁ、と思った。

──そんな、タジー&利央希望(夢入りすぎ、特に田島に/笑)