【振りサイト再録】な、なんかフラグ立ってませんか!?(>o<; (第41回を熱く語る会)

 ──なんのフラグって、“負 け フ ラ グ”が…。
 純粋に西浦の勝利を信じてらっしゃる方々、スミマセン。で、でもこれは……一度、キビシいんじゃないか、と思ってしまったが最後もうその考えが頭から離れません! どうしましょう!(ToT)
 …それに、たぶん私が作者だったとしたらそろそろ負けていただくかも、なんて思ってたりもして…(小声)

 そう考えるに至ったのは、やっぱり、今回三橋と阿部の関係のあやうさがよりクローズアップされてるな、と感じたからでして。や、今までだって、何度も何度も、ちょっとの波で崩れてしまいそうな、だいぶ砂の城みたいな様相を呈してはいましたけどもね(>_<;  前回書いた「三橋と阿部について~」でも触れましたが、今までたまたま大きな問題なかったんですよね。この超絶不安定なバッテリー状況で。  何が何でも投げたくて、仲間が欲しくて、でも実際は、捕手にサインすらもらえなかった孤独なピッチャーと、エースの球を捕れることが誇りで、一緒に勝っていきたくて、けれどあくまでプロになるための野球を貫いたエースに置いてけぼりにされてしまった傷心のキャッチャー。互いに、相手の飢えていたものを補いつつ、まるで二人合わせてひとりであるかのようにすがり合って、ここまで全勝してきちゃったわけです。  相手にとっての自分の存在意義を、ビクビクと確かめながら。  
 
 てんでチンケとはいえ(;^_^A 一応オリジナルモノカキなんで、今までの試合が全勝だったのは、確かにテーマ上の必然性があったんだなーなんて思っております(…スミマセン、読みながら、作者の意図なんか考えちまう興ざめなヤツです;)
 ここまでの全勝は、おもに、三橋のための勝利。
 キャッチャーにサインもらえなくなってずいぶん経ち、チームの誰も自分を援護してくれない状態が当たり前で、それでもって、ひたすら負け続け、その責任を周りじゅうから追及されて、自分でもそのとおりだと思っていた中学時代。
 それと比べれば、今の環境は、ほとんど真逆って言っていい。自分にサインをくれるキャッチャーがいて、打たれればフォローしてくれる野手がいて、しかもそれでもって、全勝してるわけですから。
 自分はべつにそんなに成長してるわけじゃない、と三橋はきっと思っていて、したがって勝ち続けてるのは自分のおかげじゃないに違いなくて、ひとえに「お前をホントのエースにしてやる」としょっぱな断言してくれた阿部君のおかげなんだ!という考えに到達するのは、当然といえば当然の話なんですよね。
 今までどうやっても得られなかった勝利を手に入れて、同時に、信頼も手に入れて。
 三橋はたぶん、「勝利→信頼」だと思ってるんじゃないかと思うんですよね…オレは相変わらずダメピーだけど、阿部君のリードのおかげで勝てる。だから、みんなオレのこと許してくれてるんだ、って。
 この考え方でいくと、「阿部君に嫌われたらおしまいだ」っていう発想が出てくるのもムリはない。だって、勝利することが信頼を得るための必須条件で、でもってその勝利は“阿部君がくれるもの”なんだから。

 な、なんだか連載当初のレベルに戻っちゃったようなカンジもしますが(;^o^A でも、それは同じようでいて、違うんですよね。
 いっちばん最初の三橋は、もうとにかく、阿部が何度も繰り返す「いい投手」っていう言葉を全力で否定する。捕手と言えば、嫌われた経験しかなくて、今回もきっとそうなんだと思っていたんだろう。
 でも、今は、「オレは 大事にされて いるっ」と思えるぐらいには(コレもどーかと思うんだけどさぁ/笑)、阿部のことを味方だと感じる発想が身に付いてるんですよね。
 そして、三橋が今、一時的に弱くなってるのは、まさにここだと思うんですよ。
 一度手に入れてしまった“味方”を、失ってしまうのが怖い。
 阿部父に問われて、阿部を「怖い」と答えた、その真意もこれなんだろう。

 中学時代にはついに手に入れることができなかった、勝利と味方を手に入れて、それまでの自分がどんなに飢えていたのかがよくわかった。ひとりでも投げ続けてきたけれど、決して平気だったわけじゃなくて、でも、平気にならなきゃ投げ続けられなかった、ただそれだけの話だったんですよね。
 そして、味方を失うのが怖い、もう今さらひとりぼっちには戻れないぐらいまで、“ひとりではない”という喜びを味わってきたから、今度はまた新しいことを学ばなきゃいけないと思うんですよ。
 営業マンの出来高制賃金のように、信頼っていうのは与えられるものじゃないんだということを。

 もちろん、試合で残した実績だとか、普段の練習の中での出来なんかでポジションは決まってゆくわけだけど、信頼だとか仲間意識だとかいうものは、そういうのと必ずしもイコールじゃないんだってことを、まだ三橋は知らないんですよね。
 ヒイキだと指をさされ、お前が投げるから負けるんだと責められ、チームでひとりぼっちだった三橋にとっては、「勝つ=仲間に入れてもらえる」、「負ける=みんなに嫌われる」っていう図式が当たり前になっちゃってるけど、それは違うんだということを、そろそろ、知らなきゃいけない。
(私含む読者一同が、やきもきやきもきやきもきやきもきしてるのも、ひとえにこの子のこういう部分なんでしょうし…)
 そんなこと、西浦の子たちはみんな、毎日当たり前のように三橋に教えてあげてるんでしょうけど、まだ届いてないですよね。
 三橋が阿部のリードどおりに投げて全勝してるから、みんな三橋を信頼してるんじゃない。
 それこそ、阿部がいっちばん最初に言ったとおり、「だってお前 がんばってんだもん!」──コレ、ですよね。
 もちろん勝つために練習してるんだけど、たとえ負けても、三橋への信頼はゆるがない──という実例を、見せてあげる時期にさしかかってきてるのかな、と思うんです。
 どうでしょう?(;^o^A
 

 いっぽう、阿部もどんどん底なしに危うさを見せつけまくっていますが(汗)
 三橋が“ひとりではない”んだということを実感してゆく中で、三橋の中で阿部の存在がものすごく大きな、欠かせないものになっていって、そこから、依存ともとれる気持ちが三橋の中にどーんと居座ってしまい。
 そして、阿部は、そのように三橋が自分に依存しているという事実に、依存し始めてるんじゃないだろうか。
 シニア時代に、榛名と出会い、あの豪速球をなんとかして捕りたいと思って、全身アザだらけになりながらようやく捕れるようになったのに、榛名の心は阿部と同じ方向を向いてなかったわけですよね。
 それは、阿部少年にとってはとんでもないショックで、体中についたアザの分だけ失望も大きくて、それゆえに、期待することをやめてしまった。……いや、期待することを“やめようとした”。
 失望するのは、希望があったからで、失望がデカイということはそれだけ希望も大きかったってことですよね。希望も失望も、阿部は榛名にたくさん抱きすぎてしまって、かかえきれないから手放そうとした。
 もう終わったことだ、と。
 投手なんて、テキトーに気弱なヤツ見つけて、自分の思いどおりに操ってやればいいんだ、と。
 そこへもってきて、出会ったのが三橋だったんだから……今のこの状態もムリはないよなぁという気がします。

 いつだって、どんな状況だって、泣きべそかきながら決してマウンドを立ち去ろうとしない投手。怖くても、みっともなくても、マウンドに立てるためなら何だって甘受する、おっそろしいまでの執着心。そんな投手が、18.44メートル前方から自分だけを見つめて、自分のサインどおりの球を、構えたところと寸分違わず投げてくる。
 夢中になるなというほうが、無理だったんだろうと確かに思う。

 阿部は今回、オレって友達いないんじゃないのかと心配してましたが(笑)まー、コレに関しては仕方ないんでしょうね。中学時代はホントに、シニアでの野球一筋だったんだろうし、今の西浦だって、野球部で三橋とのバッテリー&人間関係構築(笑)に必死で、他のことに気を回してる余裕がない。
 それに、阿部はもともと、今夢中になってるたったひとつのこと以外のことはどうでもいい…とまでは言わないにしても(;^_^A ものすごく関心が薄くなってしまう人なのかな、という気もします。いちいち興味関心の向け方が極端ですよね。
 三橋と並んでるから阿部ってフツーの人みたく見えてしまうこともありますけど、実はとんでもなく変なヤツなんじゃないかと思うんですよね(なんてことを)

 問題なのは、友達いない(かもしれない)っていうことそのものじゃなくて、三橋との関係以外にろくすっぽ関心を振り向けることができないぐらい追いつめられちゃってる状況なんだろうと思うんですが…。
 榛名一筋だったってことと、三橋一筋であるってことは、深いとこでつながってる気がします。
 榛名一筋であった頃の自分の傷を、癒えてもいないまま放置して、新たに“三橋一筋”という爆弾を抱えちゃってる気がする。
 たとえていえば、家の内部がシロアリに喰われて、表面まで到達して壁に大穴空いちゃった状態で、そのシロアリを駆除せずに壁の表面をひたすらモルタルかなんかで塗り固めてるかんじ?(イヤなたとえだ…/爆)
 原因追及してないんだから、ほっとけばどんどん穴は広がるわけです。そうすると、表面を塗り固めるという作業をいつまでたってもやめることができない……
 阿部の危なさって、こういうことかなと思うんですけど、どうでしょうね?

 そういうわけで、阿部は壁の大穴(=投手不信)を解決するための抜本的な手段を今んとこなにも講じていない。直視するの、怖いから。んで、“絶対的に信じられる理想の投手”像を三橋に求めて、三橋が少しでも“榛名的な言動”──速球派になりたがったり、自分のリードに逆らったり──をすることがないように、執拗に三橋を管理している。
 ……の、だと、したら?
(阿部ファンの皆様ホントにどうもすみません、でも私も阿部は好きですよ~。それにひぐちさんご自身、阿部を意図的に、ちょっとヤバいぐらいウザく描いてるような気がする…)
 まさか阿部がそんなことを明確に考えて、三橋のコンディション全般に至るまで管理してるわけじゃないんだと思うんです。
 阿部の場合、傷が無意識下にひそんでるから、その代償行為も無意識で行われてるんじゃないかなぁ。彼自身、三橋との関係がイマイチ(どころでなく/苦笑)うまく行ってないってのはよくわかっていて、でもそれがなぜなのかわからない。

 阿部は、三橋との関係のどこがどうマズいのかを知ろうとして、「オレに不満とかある?」と訊いた。まーこの訊きかたで三橋が「ある」って答えるはずもなさそうだけど……ひとまず、ない、と。
 そんで、その直後に「リードについては?」と付け足して訊いた、あれは……あーきっと阿部怖いんだろうな、と思いました。
 なにか三橋は自分に不満があるのか、だからビクビクしてるのか、でもオレだって最大限にがんばってる、これ以上どうすればいいのかわからない。阿部は、三橋から、この問いかけに対して、力いっぱいの否定が欲しかったんですよね、きっと。
「不満なんて ない よ、阿部君」って。
 だって、他のどの部分に問題があるにしたって、阿部はリードについては、充分すぎるぐらい考え抜いて三橋の持ち味を活かしてる。それで、実際連勝している。天地がひっくり返ったって、三橋がその点に首振るはずがないんです。
 阿部もその点だけは自信があって、だから、この質問したのかなぁと思うと、ホントに阿部って子が不憫で不憫で…

 外側からみれば、それは三橋の依存したがる気持ちと、阿部の依存させたがる気持ちにあるんだってことはわかるんですけど、本人たちは必死ですもんね。
 それが命綱だと思ってるし、報われなかった過去と、報われてる現在とを分ける大事な境界線だから、手放すなんて考えもつかないと思うんです。
 

 こういう関係は、気づいて脱却しようとし始めるのがふたり同時だったなら、比較的平和なんですけどもね……たいがいの場合、そうはいかないような気がするんですよねぇ…
 私の乏しい経験と思考能力によると、こういうの、最初に気づいて脱却を試みるのは、依存してた側のニンゲンです。この場合では、三橋。
 考えてみれば、三橋の心の傷のおおもとは、三星時代だったわけで、その三星のチームメイトとはもうわだかまりが解けている。三橋の心情としちゃー、まだまだ引け目でいっぱいだろうけど、さっきの壁の大穴の例でいえば、もうシロアリ駆除は済んでるんですよね。あとは屋台骨立て直すだけ。
 でも、阿部の傷のおおもとは、シニア時代の榛名との関係にあるわけで、この点まだ解決を見てはいないんですよね。3巻で再会してつかの間しゃべった、あれだけ。本格的な解決はまだもうちょっと先そうです(きっと、それって武蔵野との試合とかで実現しそうですよね…うわあ楽しみなような怖いような!)
 三橋のほうが、あとほんのちょっとのきっかけがあれば、もう一歩前に進めそうな気がするんです。

 ──まあ、仮に、もしも。
 今回の美丞大狭山戦に、負けたとしましょう、たとえば。
 敗因は、きっと、阿部のリードが完全に読まれてて、100%そのリードどおりに投げる三橋の球が冗談のように打たれまくった……ってパターンでしょう。
 このとき、三橋はどういうことを思うだろう?
 阿部を責めるだろうか? ホントのエースにしてやるからオレの言うとおりに投げろ、と言われてそのとおりにしてきた。チームを勝利に導くのがエースだ、でも今回負けた。阿部君の言うとおりにしたのに、どうしてくれるんだー!とか?
 ……ありえない、ですよねぇ……。
 思えば三橋は、三星とやったときにも、阿部のサインどおりに投げて畠君にホームランかっ飛ばされましたよね。そのときの三橋の内心──「阿部君のリードがいくらよくても実際投げるのはオレだ 打者とぶちあたれば弱いほうが負ける」、こういう思考回路ですから、美丞大狭山とやって打たれたときでも、同じことを思うんでしょう。
 で、三星戦では、「でも投げなくちゃ」と立ち上がって崩れずに投げ続け、試合は勝って和解もできて一件落着、だったわけですけど、今回もし負けちゃったら、どうなるんだろう…

 中学時代とは違って、今はチームメイトが味方で、でもその“味方”は、言い方アレだけど、三橋の気分としては“勝利で信頼を買ってる”みたいな状態じゃないですか。
 一度手に入れたすばらしい仲間、当然失いたくない。でも今回負けたから、またひとりぼっちに戻っちゃう。そんなのはもう耐えられない……なんて感じで、翌日の練習に出てくるのも怖くなっちゃったりして。
 でも、ニシウラーゼ→三橋への信頼は当然そんなもんで無くなっちゃったりはしないわけで(…よね? そこは信じたいぞ~!/汗)、そうなって初めて三橋は、“信頼ってのは、成果によってコロコロ変わったりしないものなんだ”ということを知る、と。
 そうすると、ひるがえって自分の阿部に対する“信頼”も、当然そういう固い気持ちじゃなきゃいけないわけですね。
 この点、三橋は今んとこどうなんだろう……三橋は、阿部が“勝利をくれる捕手だから”阿部を信頼して付き従ってるのかなぁ。このあたり、外から眺めてるだけでは断定できない部分ではありますが。

 だから、この試合で西浦が負けたとして。
 そのあとに続く試合もやっぱり三橋はおもに阿部のミットに向かって投げることになるわけだろうけど、これまでとは違って、「阿部君にも見通せないことがある」「負けてしまう可能性もある」「それでも“信頼してるから”阿部君に投げる」っていう気持ちが生まれてきてくれればなぁ…と期待してしまうわけなのです。
 それって、ふたりは対等ってことですよね。対等な人間同士の組むバッテリー。あたりまえっちゃーあたりまえの姿に、ようやくたどり着けるんじゃないかなーと思うんです。
 以上が、今回の試合では西浦初敗北するんじゃないかと考えてしまった、おもな理由なのでございました。は~長かった(爆)
 

 なお、そうすると、未だ過去の傷を乗り越えてない阿部のほうは、まだ三橋に自立してもらっちゃうと困るので、これまで以上にあれこれ三橋に干渉して、時に対立したりする場面もみられるのかな~とか考えてます……が、これはさすがに先走りすぎかな(汗)なんたって、たぶんこの試合また1年とかかかりそうだし(笑)
 そうなったときにでも、阿部が本当に過去を乗り越えるまでは三橋が阿部を支えてやれるようになってくれると、もんのすっごく私の好みの人間関係になってうれしいんですが!!(結局それかい)
 
 

 そんなわけで、美丞大狭山戦の私的キャッチコピー。
「オレらのキャッチは尊大で臆病。勝つために、傷心のキャッチのために。行け、オレら!」
 ……失礼いたしました~。