今日は何の日かといえばもちろん敬老の日なわけなんですが、それ以外にも、忘れちゃいけない、記念の日なのであります。
何の記念日か?
ラルク・アン・シエルのファンか、コンピュータRPGフリークならぴんと来るでしょうか──そう、映画版「ファイナルファンタジー」の公開初日なのでした。
日頃、ちまたの噂や流行とは近付きすぎず遠ざかりすぎずのお気楽スタンスを保っている我々二人なのですが、今日は思い切って、噂に速攻で飛びついてみました。
公開初日に観た「ファイナルファンタジー」。今回はそのレビューです。
(これから観ようとしている方、ネタバレを含む内容です。ここから先をお読みになるかならないかは、是非、今ご決断を。)
私はまず、この映画を実写だと勘違いしていた。街角に張り出されてた宣伝ポスター、ちゃんと見てたのに。って言うか、見てたから勘違いしたのか?
加えて、彼氏のTっちによるニセ情報のせいで、
「現在から遠いような近いような未来、世界は巨大な総合企業『シンラ』の支配下におかれていた。このシンラ・ワールドの中心である巨大都市ミッドガル・シティのスラム街に、1人の男がふらふらと迷い込むところから物語が始まる。
兵士の服を着、返り血を浴びたその若者は、スラムのバーの娘に助けられる。自分が誰なのか、どこから来たのかも覚えていない彼は、ただ一言「シンラ・ジェネレーター」という言葉だけを覚えていた。
そうこうしていると、シンラの兵士たちが記憶喪失の男を捜してスラムになだれ込んでくる。なんと彼は、シンラが実験中の新型動力炉を破壊し、しかもシンラ社長を暗殺した犯人だというのだ!
シンラの追跡を逃れ、彼は自分の記憶を取り戻すことができるのだろうか?」
……という内容だと誤解した(爆)
って言うか、このニセ情報をメールでくれた翌日に、「実はウソ」っていうメールも来たんだけど、ニセ情報のインパクトが強すぎて、好きこのんで誤解し続けていた……(注:櫻井はファイファンは7しかやってません)
そういうわけで、誤解まみれの頭のままで、映画「ファイナルファンタジー」は上映されます。
上映前に買ったパンフレットを眺めた段階で度肝を抜かれたんだが、CGらしい。ウソ、これが!?
いや、すごいの、ホント。だってほんのちょっとしたソバカス(特徴になるような目立つものじゃなくて、普通の量の紫外線に当たって生活してる人なら誰にでもできてそうな程度のもの)や、毛穴やうぶ毛、そんなものまで再現されてる!
いかにも人間の肌ーっっ、て感じなんです。アンドロイドにかぶせる人工スキンなんかじゃない、生きた肌。見りゃわかる、このすごさ……。
CGって、綺麗なものを表現するのは得意じゃないですか。同じリアルな人間の画像でも、美形は多少、表現しやすかろう。でも、ちょっとギッシュな男の肌とか、ひげの剃り跡、シミや皺の目立つ老人の顔なんかは、いくら何でも無理だよねー。
そう思っていた私の先入観、完全に覆されました。スゲエ。
で。
内容としては、「あー、このCGを試してみたかったのね」という感じの出来映えでした。それってどんなよって言えば、まぁ早い話がストーリーのほうはいまいちだったと。好きだって人、スミマセン。でも「櫻井的には」そうだったんですわ。
まぁ、上映前にパンフレット買ってきて、キャラ設定ひととおり見てから作品に臨んだっていうあたりに一因はあるかもしれないが……あ、この話、長くなりそうだ。パラグラフ分けよう。
主人公のアキは科学者。ファントムというモンスターに地球人類の生存が脅かされている中、何とかファントムを殺さずしてファントムの被害を無くそうという研究をしている、ストーリー中では実に実に異端な立場の人である。仲間は彼女の師であるシド博士のみ。
(何でそんな、言っちゃえばコストパフォーマンスの悪い研究を彼らが続けているかというと、ファントムにはファントムなりの経緯があるといえばあるからで…彼ら、地縛霊のなれの果てって言えばいいのかな。かつて戦争で滅んでしまった星の生物の、浮かばれない霊魂たちが、星が砕けて隕石となって地球に落ちてくるのと一緒に地球上にやってきたわけなのだ。カワイソウっちゃ、カワイソウ。)
アキにはグレイという軍人の恋人がいるのだが、アキは研究中に事故でファントムに身体を巣くわれてしまう。それ以来、彼女はグレイには何も告げずに自ら音信を絶ってしまう。……と、設定にある。
おおー。何だか、ドラマティックじゃないですか。
私はこのシーンが出てくるのを心待ちにしてたわけですよ。「いつ、いつなの? いつ2人は運命の悪戯によって引き裂かれて、命懸けのすれ違いドラマを展開するのっ!?」
……が、待てどもそんなシーンは出てこない。
それもそのはずだ、「もう既にアキの身体にはファントムが巣くっていて、グレイとも音信不通の状態にある時点から物語が始まってた」んだから!
ダメだよー。そーゆー、大事なとこ既成事実で済ましちゃさぁ。(ドロドロ大好き櫻井です)
この話、こういうのホントに多いのだ。「誰々は既に~~な状態にある」ってやつ。
他にも、アキには物語進行上トップクラスに重要と思われる設定が与えられている。
「アキの家族・親戚すべてファントムに食われてしまって、今はもう亡い」ってのが、それだ。
実は同じ過去を背負うキャラはもう一人いて、彼の役回りは急進派も急進派の「ファントムはひとつ残らず全滅させろ」主義。自分の幸せな家庭を根こそぎ奪ったファントムに復讐するため、軍人になって中枢部にまで上り詰めたと。当然アキとは対立している。
この人は、納得がいくのだ。設定とキャラの言動が──つまり、原因と結果が直結してるから。そういう目にあった人間として、彼の行動はとても納得がいく。そりゃー、ファントム全滅ぐらい願うだろ。それが望ましいかどうかはひとまずおいとくとして。
アキもそうならよかったのにと思わずにいられないんだよなー。
同じ設定なら、同じ道を歩んできてていいじゃないか。家族親戚ファントムにやられたんだから、上の彼と同じように、ファントムに復讐誓ってても全然おかしくない。
設定マニアな物書きとして、ここらへんに好意的な解釈をするならば、多分アキも最初は怒りに燃えていたんだろう、と思う。科学者を志したのも、ファントムをぶっつぶすための兵器を開発するためで、いつか自分の開発した技術で、父さん、母さんetc…を成仏させてあげるよ、とか思っていた──のかもしれない。
で、いつしか気持ちに変化が起こるわけだ。亡霊であるファントムを攻撃しても、堂々巡りだと。怒りに怒りで対抗しても無益なんだと。それで、作中のアキがいるんだね。殲滅反対、何とか共存しながら被害を避けようっていう方向で動く彼女が。
もし本当にそうなら、それ、シーンを割いてちゃんと見せなきゃダメだよ。
人の気持ちっていうのは、些細なことで変化するものだ。でも、その、変化したっていう事実は、とてつもなく大事件なんじゃないのかい?
人の心情の変化の過程。これこそが物語を紡ぎ上げる原動力だと思うのだ。
原因から結果まで、順を追って描いてやるべきだったよなぁ。
この設定を与えられて、私がシナリオ作れって言われたら、そうだなあ…
「アキは科学者。ファントム殲滅急進派で、兵器開発にいそしんでいる。ある日、兵器の威力を試すための被検体としてファントムを捕捉するためにドームの外へ出たら、返り討ちにあってファントムに身体を巣くわれてしまう。
この状態で即死する場合と、しばらく持ちこたえる場合がある。アキはしばらく持ちこたえたため、急いでドームに運ばれ、シド博士の施しで一命を取り留める。だが、一度身体に巣くったファントムは排除できず、シド博士の主張する「共存方法」で封じ込めている状態。
急進派のアキと穏健派のシドは何度となく対立してきたし、この一件以降もそうだったが、次第にシドの言うことがストンと心の中に落ちてくる。ファントムは、自分の中で生きているのだ。自分を食うことなく、自分に殺されることもなく、時に、ファントム自身の経験してきた悲惨な記憶をアキの心に訴えて──。
アキは意を決して、シド博士のもとへ行く。「あなたの研究内容を話してちょうだい」…以来、恋人のグレイとは音信を絶ち、ファントムをやっつけずにすむ方法を、シドとともに模索し始める。
軍部はファントム殲滅のための最終兵器を完成させ、運命の日が近付く…」
こんなんどうでしょ?
出来がいいかどうかはおいといて(^ ^; ドラマの形には、とりあえずなってると思うんだけど。でもこれまともに映したら、2時間で済むかどうかはとても謎。