【振りサイト再録】三橋と阿部について本気出して考えてみた(第39回・40回感想)

 今回もまた感想溜めてしまいましたよ…どーもダメですねぇ。
 さー、がしがし書きますよ! もしかしたらこのサイト始まって以来初めてかもしれない、“三橋と阿部”と題を冠した書き物…それって三橋サイトとしてどうなんだろうと思わなくもないですが(;^_^A とにかくレッツゴーです。
 

 
 うーん……なんかね、ぼんやりと思い描いてた不安がもうそろそろオモテに出てきそうというか、今までたまたま全勝だったから気に留めずにいた問題が、ドバーッと噴出してきそうですね。
 この二人のことは、基本的に私、どっちが主でどっちが従とか、そういうことはなく、どっちも同じぐらいいっぱいいっぱいな取り合わせだと思ってるんですけど。
 なんか、今の今まで溺れ死にかかってて、水の中でもがけばもがくほど苦しくてどうすればいいかわからなくなっているところへ、急に陸に引き上げられて、大量の水を吐き出しながら、少しでも空気を摂取しようと矢継ぎ早に呼吸をくりかえして喘いでいるような状態? ……そういうカンジに、近いものを感じます。
 打線に援護してもらえなくて、リードももらえなくて、投げれば投げるほど苦しくなって、もうダメかもと思ってたところへ、「オレのリードどおりに投げろ」と宣言してくれた捕手に、ほとんど陶然となってしまってる三橋。
 リードしてもリードしても、そのとおりに投げてきてくれることのほうが稀な投手と組んで、その上ピンチな試合の最中にその投手にマウンドを去られてしまい、傷をかかえたままの状態で、どんなときでも自分のリードにうなずき、そのとおりに投げてきてくれる投手と出会ってしまった阿部。
 ……そりゃあ、相手に夢中になっちゃいますよね。もう、うれしくてうれしくて、ずっとこのままでいいんだとか思っちゃいますよね。事実、ここまで勝ち続けてきちゃってるわけだし、よけいに。

 あれだけ桐青戦でみごとに勝っても、どうも三橋はまだ、フツーに自分に自信を持つってことができてないみたいで(桐青戦翌日の回で如実でしたね…)、野球やっててよかったという感慨を持つことはできてきてるようだけど、あの回で泉君が言ってたことは、まだ三橋の中でちゃんと消化されてないんじゃないかって気がする。
 “お前がよくねばったから”勝ったんだ。“お前ががんばってるから”みんな認めてるんだ。そういうコトをわかってほしくて泉君は言ったんだろうけど、三橋の中に3年かけて根付いてしまった自責の念はそうやすやすと消えない。
(こういう心の傷を、お手軽に克服させないで、執拗に執拗に描き込むところが、おお振りというマンガの得がたい個性だと思うのよね…)
 それに、三橋の中ではたぶん、この言葉が漬け物石のようにドーンと居座ってるんじゃないかなぁ。
「首振る投手は 大嫌いなんだ」
 By:阿部様ですよ!(笑)
 自分に自信を持ってなくて、リードされるってことを字義どおりに“有り難い”って思ってて、その上で「お前をホントのエースにしてやるから、オレの言うとおりに投げろ」って告げられたわけですよ。
 今まで勝ってきたのはぜんぶぜんぶ阿部君のおかげだって思いもしますわな。その阿部君に捕ってもらえなくなったらもう自分はおしまいだ~ぐらい思いますわな。もんのすっごく、間違ってるんだけどさ。

 三橋がリードされるってことを“有り難い”って思ってるのと同じぐらいには、たぶん阿部も、自分のミットに自分のリードどおりに投げてきてくれるってことを“有り難い”って思っている。
 阿部のほうにはたぶん、自分の中でこう確固とした“野球観”、“バッテリー観”みたいなのがありますよね。そういうのをやりたいな~やりたいな~、とソワソワしてたであろうシニア時代に、榛名と出会ってしまった。……いや、榛名との出会いと決裂を通じて、あんなカンジのバッテリー観が育ってったのかな? どちらにしても、最終的には榛名とはそれを分かち合うことができなかったわけです。
 人の話は聞かない、人の出したサインにうなずかない、よしんばうなずいたとしたって狙いを外す。おまけに、何が何でも80球でマウンドをさっさと降りる。
 阿部のコミュニケーション下手もそうっとうなもんだと思いますけど(;^_^A これはひょっとして、榛名絡みのことでしこたま空回りしたから、ってのもあるのかなぁ。シニア時代見てると、どうも今よりいろんな感情の表し方がストレートな気がします。いや、今だって十分感情的な人だけど(笑)表し方がちょっとねじれてますよね。それも、意図的にねじってるんじゃなくて、無意識にねじくれてしまってるカンジ。
 対投手のコミュニケーションにおいて、二人で力合わせて勝ちたいだとか、オレひとり置き去りにしないでくれとか、そういう基本的なとこを決定的に突っぱねられてしまったから、もう怖くなっちゃってなかなかまっすぐに表現できないでいるのかな。
 阿部が三橋に言わないでいることって、ものすっごい大事なことが含まれてたりして、そのまんま口に出せばなんかの糸口になるのに、みたいなこともところどころ見える。
 「オレの言うとおりに投げろ」「首振る投手は大嫌いだ」あたりの発言について、阿部いまだにフォロー入れてないっぽいし……
 ──と書いてみて、ふと思った。
 阿部って、まだ、「首振る投手嫌い」なんじゃないのか?

 入学したての頃は、シニア時代の恨みから、榛名と真逆の投手──球遅い、コントロールいい、自分の言うこと100パーきく、という3拍子そろった投手を求めて、ドンピシャの三橋と出会い、こいつをオレの思うとおりにコントロールしてやろうと思っていた。
 今はもちろん違うわけで、モモカンの言うとおり「信頼されるっていいこと」だと思い直して、三橋を道具のように扱うのはやめることにした。
 でもこう言っちゃなんだけど、やってること、無意識に思ってることは、以前とあんま変わってないですよね。
 支配するためなのか、大事にするためなのか、の違いはあるけれど、阿部はどちらにしろ三橋にあれこれ指図している。三橋が、三橋自身のことですら自分で考えて意思を表明する隙を与えないかのように、そりゃもう執拗な指図を。
 三橋を大事に扱いたいから、あれこれ介入する。自分たちは互いに信頼し合ってるから、自分が最高のリードを組み立て、三橋は決してそれに首を振らない。
 ちょっと言い方悪いけど(阿部ファンのかたスミマセン、でもこれは三橋にも言える)、“信頼”っていう美しい言葉にすがりついて、二人は本当のコミュニケーションからどんどん遠ざかっちゃってるんじゃないかなぁ。
 

 三橋は今までひとりなのが当たり前だったから、ひとりでいることに平気にならなければ投げ続けられなかったから、何があってもマウンドに、たったひとりで立ってきた。三星とやったときに、阿部がボーゼンとしちゃっても、三橋ひとりで持ち直したりできたわけです。
 でも、今、それができるのかなぁ?
 人間、ひとりでいることには、まぁ程度の問題はあるけどなんとか耐えられるんじゃないかと思うんです。でも、ひとりになってしまうことってのは、もっとずっと辛いことなんだろうなと思う。
 三橋は、阿部の気持ちがいかにシニア時代の心の傷に根ざしたものであったのだとしても、阿部が自分にくれる言葉とか、リードとか、勝利とかを両手で受け取ってきてしまった。そうすることで、今を幸せだと感じ、中学時代にはいかにそれが欠けていたのかということもわかってしまった。
 もう、今さら中学時代みたいな状況に戻れないような気がするんです。

 阿部はと言うと、三橋を支配することをやめたときに、それと入れ替わるようにして「信頼関係を結ぼう」と考えるようになった。榛名とは正反対の、球の遅い、コントロール抜群の、首を振らない、そして何があってもマウンドを降りないで自分のもとへ投げてきてくれる投手。その投手と、榛名との間にはついに築き上げることができなかった“信頼関係”をつくろうと思った。
 そうすればオレは報われる、あの頃のみじめで哀れな自分を打ち消すことができる、榛名との関係は間違っていたんだと証明できるんだ……と。
 あれほどのショックを受けて、今はもう完全にふっ切れていますなんてことはないと思う。彼は、傷つき続けていることに耐えられなくて、ムリヤリ過去のことにしようとしてるんじゃないかなぁ。
 三橋が看破したとおり(こういうとこ、三橋は決してアタマ悪い子じゃないと思うのよね)阿部は榛名が“嫌い”なんじゃない。榛名に向き合ってもらえなくて“悲しい”んですよね。悲しい自分を救ってやるには、榛名と組んでるときにしてやりたかったこと、一緒にしたかったこと、全部満たさなければならない。阿部が三橋に尋常でなく過保護なのも、そのせいなんじゃないのかなぁ。
 傷を傷として受けとめているかどうか、という点について、阿部は三橋より弱いんだと思う。
 阿部は、三橋に寄りかかってもらわないと不安でしょうがなく、だから(計算づくじゃないと思うけど)そのように三橋を導いて、自分に依存するような図式を築き上げた……んだとしたら、ちょっと阿部不憫すぎますかね(;^o^A
 は、ハナシ半分に読み流してくださいまし。
 

 三橋がどんどん阿部への依存度を強めているのだとしたら、いっぽうで、阿部はどんどん三橋への共依存度を強めているのかもしれない……これは早いうちに脱却しないと、けっこうヤバメだと思うんです。
 どっちがよりヤバいって、“共依存”側──依存されることに依存している側のほうですよね。がんばれ、阿部。
 

 ……あれれ? 気がついたら肝心の本編感想がどっか行っちゃった(笑)
 ひとまず、三橋と阿部についてつらつらと考えてたことをおおかた吐き出せたのですっきりしましたけど。
 今度はもうちょっとちゃんと感想書きたい…