【フェニックス】


今日もまた 名もない冒険者が力尽きた
彼の足跡をたたえる歌はなくて
彼のカバンにはひとかけらのパンもなくて
ただ 握りしめた拳にわずかな砂をつかんで

腕を伸ばしながら 倒れ伏した身体に
冷たい地面を感じたら それを希望と呼ぶのかもしれない

仰ぎ見た空が 紅く燃えさかる
急ぎ足の街に 火の粉が降りしきる
フェニックスの鱗粉を身体に浴びて
彼はぼやけた頭で 今日という日を生き長らえる

夕日が町並みの向こうへ溶けてゆくと
世界の裏側では容赦なく朝が始まる
そして無情な太陽がすべてを暴いてゆく
夜の闇は何も語らずに ただそこにあるのに

「また今日も」と呟いて終わる一日を
いくつ過ごせばいいのだろう 地図すらもないこの旅路

あかあかと染まる この街のどこかに
いるのなら どうか彼に立ち上がる力を
フェニックスの鱗粉が降りそそぐ夕暮れ
街は どこまでも続く今日という日を与えられて

「“また今日も”は“きっと明日は”に似ているね」と
遠くでささやく声がした 微笑んでくれた気がした
何も語らない空の静けさに身をゆだねて
今は眠ってしまおう 目覚めたらまた新しい今日

いのちの色に満たされた この場所で

仰ぎ見た空が 紅く燃えさかる
急ぎ足の街に 火の粉が降りしきる
あかあかと染まる この街のどこかに
いるのなら どうかどうか僕に力を
フェニックスの鱗粉を身体に浴びて
僕は決して終わらない今日という日を生き長らえる
フェニックスの鱗粉を身体に浴びて
僕はどこまでも続く今日という日を生き長らえる

見果てぬ明日へ 生き延びてゆく

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